命を狙う口腔細菌

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命を狙う口腔細菌

2019/12/16

歯がある人の口の中には300種を超える細菌種が数10億個も住みついている。口の中が不潔だと、その数は1兆個近くになってしまう。細菌たちは、唾液や「歯肉溝液」を主な栄養源として歯の表面、歯ぐきのポケット、だ液、舌、頬や咽頭粘膜に自分達のすみかを築き、口の中、および全身の健康をおびやかすようになります。
これらの細菌による慢性感染症が原因となって、腎炎リウマチ関節炎さらには皮膚炎などを起こすこともわかっています。
さらに近年になって口の中に住みつく細菌が肺炎心内膜炎を起こしたり、歯周病原菌が妊娠のトラブルの原因となったりしていることが証明されるようになった。

 

細菌性心内膜炎を起こす口腔細菌
口腔内の細菌は、頻繁に血液中に入り込んでいる。
しかし、健康な場合は防御機能が働いており、侵入してくる細菌を速やかに駆逐してくれるお陰で一時的に菌血症となるだけですむ。
ところが防御機能の低下した人の場合、細菌が口から侵入しても駆逐できず、敗血症になってしまう。敗血症は、癌患者、糖尿病患者、免疫不全のある患者、さらには高齢者などでは致命的感染症になる。

口の中の細菌は、非常に付着する能力が強いため、心臓弁膜などにもへばり着いて増殖し、細菌性心内膜炎を起こしてしまう。
歯周病の原因菌のひとつは、白血球毒素をもっており、白血球の食菌、殺菌作用に抵抗して心臓弁膜に付着して、しばしば心内膜炎を起こしてしまうのである。

心臓疾患の原因となっている
歯周病の原因菌は、共通して内毒素をもっている。
その内毒素が歯肉溝から血流中に入り込んで、循環障害を起こすと考えられている。

歯周病があると冠状動脈疾患が1.5倍、そして心疾患による死亡が1.9倍、さらに心筋梗塞の発作が2.8倍高いという驚くべき調査がある。

肺炎の原因菌は口腔内に潜む
肺炎は我が国では、死亡原因の第四番目で、65歳以上の高齢者に限ってみるとトップを占める感染症である。
口やのどに住み着いた細菌が知らぬ間に肺に吸引されて肺炎を起こすのだ。
就寝中には、嚥下反射(えんげはんしゃ:正しく飲み込む力)は低下している。
特にそれは高齢者や寝たきりの人にみられる。さらに老齢者など人の気道は、粘膜にある綿毛の活動が低下しているため、細菌が吸引されやすいのです。
ふつう、健康な人の場合、間違って気管支や肺の方に細菌を飲み込んでしまっても、運ばれた細菌は、細胞に存在するマクロファージなどに食べられて殺される。ところが高齢者などのは感染防御の働きが低下してしまっているため、肺に到達した細菌が増殖して肺炎を起こしてしまうのである。
肺炎は、食べ物をうまく摂食できないことによっても起こる。
また食べ物そのものが異物となって肺炎を起こすこともある。
一緒に入り込んだ細菌が増殖して、肺炎が重くなることが多いのである。
健康な場合でも、50%の人が睡眠中に誤嚥(まちがえて肺の方に飲み込んでしまうこと)が起きており、アルコール中毒者、薬物の乱用者、てんかんのある人は特に誤嚥(ごえん)が多い。
特に寝たきり高齢者、慢性呼吸器疾患のある人、糖尿病などの代謝異常のある人、喫煙者、免疫不全のある人、手術後の患者さらには薬物使用者で、口の中のそうじが不十分な人は要注意である。
病原性は口・のどに多いことから何よりも口腔清掃が大切になる。
使用している義歯の清掃も含む。さらにうまく飲み込めるような献立の工夫も必要である。専門家による嚥下(飲み込み)指導も必要になってくる。
老人性肺炎の予防は、歯科医療担当者の大きな役目の一つなのである。

腎炎を起こす口腔細菌
口の中の細菌が原因で起こる病気では、ほかには扁桃腺炎や歯周病などがある。
口の中にある細菌によるアレルギー反応の結果、糸球体腎炎が起きてしまうこともある。
また細菌が、関節腔に沈着すると、炎症が起き破骨細胞が活性化され関節炎が起きてしまう。
口の中を不潔にしておくことは、全身の不健康に直結するのである。

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